回復とは「元に戻る」のではなく自分の人生の舵を握りなおすこと|【明石市・神戸市】精神科特化訪問看護ミント
2025/11/18
RECOVERYって再び人生の舵を握りなおすこと
~元に戻るはリカバリーではありません~
みなさんこんにちは!精神科特化訪問看護ミントです
今日は何度もお話ししてきたリカバリーについて3つに分けてお話ししていこうと思います。
11月はミントが応援しているリカバリーカレッジで「リカバリーストーリーを語ろう」を
テーマに4人の人がご自身のリカバリーストーリーを発表します。それに因んで
ミントリカバリーについて思うことを3つに分けてまとめてみました。
①「回復」とは元に戻ることではなく、人生の舵を握り直すこと
■導入:”元に戻る”という言葉の違和感
「いつになったら、元の自分に戻れるんだろう」
精神科訪問の現場で、そうつぶやかれるご利用者様は少なくありません。
病気が発症する前の自分——働けていた頃、笑えていた頃、周囲と自然に関われていた頃——を思い浮かべながら、「そこに戻ること」が“回復”だと信じて、辛くなるという姿を何度も見てきました。
でも本当に?回復=元に戻ることなのでしょうか。
私たちが支援する「リカバリー」という考え方は、もう少し違う場所を目指しています。
それは、“元通り”を取り戻すのではなく、自分の人生をもう一度、自分の手で舵取りできるようになることです。これはWRAPで活躍されているねてるさんに教えてもらった考え方です。
■「治る」と「リカバリー」は違う
医療の世界でよく使われる「治る」は、症状がなくなる、検査値が正常に戻るといった客観的な状態を指します。
一方、「リカバリー」は、その人がどう生きていくかという主観的で個人的なプロセスを意味します。
たとえば、薬を飲みながらでも、自分らしい生活ができる。
働けない時期があっても、好きな趣味を続けられる。
落ち込みがあっても、人と関われる場所を自分で選べる。
——これらはすべて「リカバリー」の姿です。
つまり、リカバリーは“病気がなくなること”ではなく、“人生の舵取りができるようになる段階”。
生活の中で繰り返される「選択」が自分の意思でできることもその一つ。選び、決めることができるようになる過程そのものが、リカバリーなのです。
■人生の舵を失うということ
精神疾患の発症は、多くの場合、“自分の意志が働かなくなる体験”としてやってきます。
眠れない、仕事ができない、人との関係がつらい——そうした中で、自分で自分の人生の舵取りができなくなり、できていない感覚が強くなります。
自分の「思う通りの人生」を生きるなんてことは多くの人にとって難しいことではないでしょうか。でも、自分で舵を取りながら、うまくいくこともいかないことも経験しながら生きていると、思い通りではないけど充実感があったり、時に達成感を感じたり、自己効力感を感じられることもある。でも、自分の舵取りを失った時にはただ漂っているような、空しさであったり、強い流れに押し流され、溺れているような感覚を味わうこともあるでしょう。
やがて、無理を重ね、疲れ果ててしまう。
リカバリーとは、そんな風にして失われた舵を再び握り直すこと。
そして、たとえゆっくりでも、「自分なりのやり方、決定」を取り戻し、自分で舵を握って前に進む感覚を取り戻すことだと思うのです。
■“舵を握る”とは、すべてを自分で決めることではない
ここで勘違いしやすいのが、「舵を取る=すべて自分で決めること」ではない、という点です。
人生の舵を取り戻すとは、必要なときに支援を求められる自分になることでもあります。
「助けて」と言えること。
「今は休みたい」と言えること。
それもまた、自分の舵を握っている証拠です。
自立とは孤立することではありません。
誰かの手を借りながらも、自分の意思で方向を選び取っていけること。
それが、精神科領域におけるリカバリーの本当の意味だと感じています。
■支援者として見てきた“舵を取り戻す瞬間”
訪問看護をしていて印象的なのは、ご利用者様が“他人のためではなく、自分のための選択”をし始める瞬間です。
それは大きな決断でなくても構いません。
「今日は気分が整ってるな、外に出てみようかな」
「無理せず、午後から行こう」
そんな小さな選択に、確かな舵の感触があります。
ある方は、長年続けてきた仕事を辞める決意をされました。
「もう頑張るのはやめた。これからは、心が楽な方に行く。」
それは「諦め」ではなく、「舵を握り直した瞬間」だったと思っています。
■社会や支援の側が陥りやすい“元に戻そう”という圧力
支援の現場では、「元の生活に戻れるように」という言葉がよく使われます。
もちろん、善意の表現です。
しかし、この“元に戻る”という視点は、本人を“病気になる前の姿”に縛りつけてしまうことがあります。
社会も家族も、「以前のように働いてほしい」「元気だった頃のあなたに戻ってほしい」と願いがちです。
けれども、人は誰でもとの場所に戻ることはできないと思います。時間が逆回りすることはありません。常に進んでいる。だから、それは、病気に限らず、人生のあらゆる場面で同じだと思うのです。
大切なのは、「どこに戻るか」ではなく、「これからどう生きるか」。
リカバリーとは、“再生”ではなく“再選択”の道なのです。
■リカバリーは「今を生きる力」
リカバリーを歩む人々の共通点は、「今ここにある自分」を少しずつ受け入れていく姿勢です。
「もう前のようにはできないけれど、それでも今の自分にできることがある」とか
改めて自分ができていることを再認識して「あ、これやれてる!」
そう思えた瞬間に、人生の舵は自然と手の中に戻ってきます。
支援者としてできるのは、その人がもう一度舵を握れるよう、隣で風向きを一緒に感じること。
時に嵐の中でも、「大丈夫、あなたの船は沈まない」と信じることなのではないでしょうか。
■まとめ:リカバリーとは、“人生の主導権”を取り戻すこと
リカバリーとは、病気をなくすことでも、昔の自分に戻ることでもありません。
それは、自分の人生の主導権を再び手にし、
「日々のちいさな決定」そして
「これからどう生きるか」を自分で選び取る力を取り戻すプロセスです。
時間と支援と、希望、信じる力、、、これらが少しずつ共鳴することで
人は再び、自分の航路を描き始めることができます。
次回予告:
第2回「支援とは、その人の舵取りを信じて待つこと」
——信じるという支援の在り方について、現場から考えます。
では、またです!


